【レポート】 業界特化型プロダクトを開発するために必要なこと #pmconf2021
どうも皆さん、たいがーです。
祭りだ\わっしょい!/ということで、pmconf2021が始まりました!今回はTrack Cの朝一セッション、"業界特化型プロダクトを開発するために必要なこと"をレポートさせていただきます。
登壇概要
メドレーは医療業界に特化した様々なプロダクトを開発している会社です。
医療業界は、2020年のCOVID-19の流行と共に様々な変化が起きています。一方、医療業界は歴史のある業界であり、変化や革新という言葉とは対極にありました。そのような背景の中、非連続な変化への対応と不変的なものへの対応、両立が難しい2つの要求に対して、どのように考えアプローチしているかを事例を交えてお話します。
DXという言葉に注目が集まる中、医療業界以外にも業界特化型のプロダクト開発に携わる方も増えてきていると思います。そのような方のプロダクト作りの参考になれば幸いです。
登壇者
株式会社メドレー 取締役CTO 平山 宗介様
株式会社メドレー 会社概要
医療ヘルスケアの未来を作る
- 二つの事業を展開
- 人材プラットフォーム事業
- 医療プラットフォーム事業: 医療現場とアプリで繋がる
- CLINICS
- 電子カルテ
- オンライン診療や服薬指導アプリ
- Pharms
- 薬局支援システム
業界特化型プロダクトとは
- 職種に関係なく、特定の業界に特化したプロダクト
- 職種(横軸)で割ったプロダクト
- 例: Salesforce/freee/SmartHR
- 業界(縦軸)で割ったプロダクト
- 業界例: 教育/医療/製造/金融/宿泊
- 職種(横軸)で割ったプロダクト
- 業界特有の「壁」があり、それを乗り越えることが必要
- 業界成熟度が高くなるにつれて壁が大きくなる傾向があり
- 例: PASMO定期
医療業界の特徴
- 「計画経済」の世界にいる医療業界
- 一般的な供給者/需要者の関係ではない
- 患者⇆診療所/病院/調剤薬局⇆保険会社 という三者の関係や国が関わる
- 多くの規制やレギュレーションが存在する
- 医療広告ガイドラインなどが珍しいかもしれない
- 例: 初診料
- 細かく規定されている
- 曖昧な表現になりがちな日本語で書かれている
- 解釈が人によって異なりかねない
- 療養担当規則
- 規則上、別紙を提出する必要があり
- つまり、紙を出力する必要がある
- ドメイン理解の難しさ
- JAHIS(一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会)が出しているチャート
- 複雑であるということが見ただけでわかる
- 医療業界の壁を越える難しさ
- 全体感を踏まえた上でのプロダクト制作がとても難しい
- 結果としてレガシーの発生
- 新規参入も難しい
- 使用技術の陳腐化
- 結果として移行できないデータ
- 後継者不足
- 「非連続な社会変化」と「普遍的な医療業界」
- 医療現場ではこのような事象が発生する
- 予約したのに待たされる
- 自分の病気のことがわからない
- 医療現場ではこのような事象が発生する
医療業界へのプロダクトアプローチ
- 業界アプローチ
- 不変的な医療業界
- 圧倒的なドメイン理解が必要
- 一般的なことであれば、検索や書籍、公開ドキュメントを探せば大体のことは把握できる
- それに対し、医療ドメインは書籍やインタビューなどに頼る必要がある
- 歴史をむげに否定するのではなく、深い理解とともに過去の取り組みを未来に繋げる
- 社会変化とのギャップ
- ドメインを深く理解した上で、顧客からの声を吸い上げる
- ポイントをずらす
- ずらし方の塩梅は難しい
- たくさん/少し/段階的に
- 医療現場でカルテは紙である
- 現状、紙を使っている業界に対していきなりSaaSを持ってくると驚きが出てきてしまう
- 一度、紙をそのままシステムに持ってくる
- 医療現場でカルテは紙である
- ネジを締めすぎない
- 未来に迎えられるサービスづくりをする必要がある
- 例: コロナ禍における電話や情報通信機器を用いた特例的な取り扱い
- 愚直にアプローチをしすぎるとコロナ禍が終わった後に対応できない
- たくさん/少し/段階的に
- ずらし方の塩梅は難しい
- 時間軸のコントロール
- R&D→シェア獲得→利益獲得→成熟期/後退機
- レガシーなものに対して開発を急がない
- コロナ禍への対応は素早くすべきである
- R&D→シェア獲得→利益獲得→成熟期/後退機
まとめ
- 業界特化型プロダクトを開発するためには、業界特有の「壁」を乗り越えることが必要
- 医療業界にも特有の大きな壁があ利、それによってレガシーが発生している
- そのため、一般社会と医療業界の認識のギャップは大きい
- それを踏まえ、業界全体に対してプロダクトを展開するためには以下のアプローチが必要であると考える
- 圧倒的ドメイン理解
- ポイントをずらす/ネジを締めすぎない
- 時間軸のコントロール
DiscordでのAsk the Speaker / Q&A
- 新規joinした開発メンバーに対するドメイン理解をどんな粒度/深度で行っているか?
- 深い粒度まで勉強会を開催している
- 歯の根っこが2本あるなど
- 深い粒度まで勉強会を開催している
- 隔年で発生する診療報酬改定などの各種法改正に対し、「解釈」に幅があり複数の考え方(計算方法など)が発生したケースついて、最終的に誰が・どう判断しているか(PdMがそこにどのように関わっているか)?
- 社内に医者/薬剤師などの医療現場のメンバーがいる
- 最終的判断はPdM
- 開発した機能等について、現状の医療業界に即しているのか、実用的なものになっているのか等はどのように確認しているのか?業界的にも社内のみでは確認するのが難しいのでは…
- 子会社に調剤薬局がある
- 現場でのインタビュー
- 普通にヒアリングすると、今の方がいいという回答が多い
- ストーリーを伝えることを意識している
- インタビューには営業というよりもプロダクト開発をしているメンバーが出向いている
- メドレー様の電子カルテのターゲットはどのように選定されているのか。大学病院のような規模だと国内メーカーの電子カルテがシェアを占めていることが多いかと思ったため、シェアを奪還するターゲティングなのか、電子カルテ未導入施設がターゲットなのか教えていただきたい。
- CLINICSは診療所(町医者)ターゲット
- 製品のラインナップごとにターゲットを変えている
- 品質に関して、特に重要となるプロダクトを開発されていると思いますが突き詰めてしまうと、コストや期間などに影響が出ると思います。そのあたりPdMとして、どういった判断や考え方をしているのでしょうか?
- 価格に対してどのくらいコストをかけられるのか⇆品質のバランス
歴史や経緯を無碍にせず、未来へつながるプロダクトを作ること
今回のお話を聞き、改めて歴史や経緯を知ることの重要性を知ることができました。
平山さんもおっしゃられていましたが、否定からは何も生み出されませんよね。背景を知った上で理解し、一緒にどうやって良くしていくのかがプロダクト制作において最も重要なことではないかと改めて感じました。
確かに何故か現状使いづらさを感じているが、その根本的な原因が分からない。 使いやすくしたいが、様々な経緯があって変えることが出来ない。
プロダクトのユーザーが現状に至っていることには様々な経緯があります。それを理解した上で、少しずつずらし、より良いプロダクトに向けていく。そのためにも「ネジを締めすぎず」、早く改善すべきものを見極めていき、短期的/中長期的な改善を続けていくことが大切だと感じました。
現場の声をすぐに聞ける環境にされているのも、とてもいいですよね。私ももっとユーザーからの声が聞いてみたくなりました。